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業務のドキュメントの利点、欠点と対策

注記。これは仕様書やマニュアルといった技術的なドキュメントの話ではなく、業務のルールを記述したドキュメントを想定している。

業務をする際に、他の人・部署に依頼をすることがある。 この依頼が、何かしらの業務フローに組み込まれている場合、同じパターンの依頼が繰り返し行われる。 そうなると、依頼にあたってどういう情報が必要なのかといったノウハウが依頼先に蓄積していく。

このようなケースでは、ある程度ノウハウが蓄積した段階で、それをドキュメント化し、状況に合わせて更新することが望ましいと考えている。 その根拠として、ドキュメント化によるメリットを記載し、逆にデメリットと対処方法を記載したいと思う。

ドキュメント化によるメリット

1. 属人化を防ぐ

依頼先は、依頼内容をチェックして何かしらの判断を行う。 判断を行う過程や、判断を行なった後の結果を見た後に、「この過程ではこれを見るべきだ」という気づきが得られることがある。 その時の依頼先の担当者がそれに気付いて、他の担当者に情報が伝達しないのであれば、その気づきは担当者の中にだけ閉じたものになってしまう。 結果として担当者ごとに判断基準が変わってしまい、一連の依頼に不必要に時間がかかったり、他の担当者であれば気づけた点が漏れてしまうといった問題を生じる恐れがある。

2. 無駄なコミュニケーションが省かれる

依頼元が提供する情報において、必要な情報が欠けていたり、そもそも依頼の仕方がおかしい場合がある。 情報として何が必要なのか、どういうケースでどういう依頼をすべきなのかという情報を書いたドキュメントがあれば、それを依頼元に見せれば良いだけであるが、ドキュメントがなければその都度問題を指摘して修正してもらうというやり取りが発生する。 ドキュメントがあれば、依頼元担当者の経験に関わらず、無駄なコミュニケーションを省く結果に繋がる。

3. 業務フローを改善しやすくなる

前述の「コミュニケーションを省く」という言葉には身構えてしまうかもしれないが、暗黙的にせよ何かルールがあってそれを指摘する/されるというコミュニケーションが無駄なのであって、本来必要なコミュニケーションは、ルールを改善するためのコミュニケーションであるはずだ。 ルールを改善するためには、まず現状のルールを把握する必要がある。そのために、現状のルールをドキュメントに記述し、必要に応じて改善することが重要である。

ドキュメント化によるデメリットと対処方法

逆に、ドキュメント化することでのネガティブな面についても記述する。

1. ドキュメントの作成・維持コストがかかる

ドキュメントの作成と維持については、明らかにコストがかかる。 前述した「無駄なコミュニケーションが省かれる」ということでのコストメリットもあるが、定量的に比較するのは難しいだろう。 ただ言えるのは、属人化やコミュニケーションコストの問題は、この依頼に関わる社員の数が増えれば増えるほど大きくなっていくということだ。 また、業務フロー自体の寿命も考慮する必要がある。 業務フローが普遍的なものであり、社員数も増え続けているのであれば、ドキュメントの作成と維持にコストをかけるのは妥当な判断ではないか。

2. ドキュメントが更新できず、実態と合わなくなる

ドキュメントを作っても、特定の担当者しかドキュメントを更新せず、ドキュメントの更新がその人のやる気次第になってしまうと、ドキュメントはいずれ更新されなくなる。 そうなると、業務の実態に合わず、見るべきではないドキュメントとして扱われてしまう。

この問題に対処するには、ドキュメントの更新に際して何かしらルールを定めることだと思う。 まず、ドキュメントの閲覧者がドキュメントの不備や改善点を見つけた時に、その修正依頼を行えるようなルールや仕組みを作ること。 そして、ドキュメントの主管部署内において、管理しているドキュメントを定期的に見直し、業務の実態に合わなくなっていた場合に、ドキュメント自体を削除するか、ドキュメントを更新するかのいずれかの対応を行うことだ。 ドキュメントが業務の実態にあっていない場合、ドキュメントの更新が必要だと認識されているがそれがしがたい状況にあるのか、ドキュメント自体が不必要なもので誰も参照していないか、ドキュメントの書き方に問題があり誰も理解できないものになっているか、などの問題が考えられ、それを分析した上で対応が必要となる。 誰も見ていないドキュメントは維持するだけ時間の無駄なので、削除してしまった方が良いだろう。

3. あいまいな表現により、誤った解釈がされてしまう

誰に対しても誤った解釈をされないようなドキュメントを書くことは難しく、予想外の解釈に基づく判断をされるリスクがある。 ただ、こういった誤解釈は口頭でコミュニケーションを行なった場合でも生じやすいものではあり、ドキュメント化されていれば対策はしやすいと考えられる。

まず、ドキュメント作成時に他者からのレビューを行うこと。ドキュメントを書いている人の視点だけでは気づきにくい点があるだろうし、ドキュメントを管理する人が増えるという点でもメリットがある。 そして、ドキュメントに対する指摘があったり、ドキュメントの不備による誤解釈があった場合には必ずそれを修正すること。 こういった対策はまさに、ドキュメントをソースコードと同様に扱うということである。

結び

以上より、ドキュメント化による利点と欠点、欠点に対する対処方法を示した。 欠点に対する対処方法はいずれも時間的なコストを増やすものであるため、社員数が少ない企業では受け入れがたいものかもしれないが、既に多くの社員を持つ会社はもちろん、今後の成長が見込まれる企業においても、社内業務の改善を図る上でドキュメント化は重要であると考えている。